これまで起業家としての人生を歩んできてたくさんの人と出会ってきました。
その中で「信用」と「信頼」という言葉がよく飛び交うのですが、それぞれの厳密な意味をしっかりと抑えた上で適切に使い分けることができているのはほんの一握りの人だけなのではないかと感じました。
私個人も、「信用」と「信頼」それぞれの意味をしっかりと理解し始めたのは、3社目を起こしたつい最近のことなので、もっと早く気付きたかったと後悔しました。
この記事では、信用・信頼の意味を踏まえ適切に使い分けることで人生において成功の確率が上がる、という話をお伝えできればと思います。
「信用」と「信頼」の違いは、過去/未来のどちらかを信じるか
これまで、日本人でありながら2つの言葉をごっちゃにして使ってきましたが、それぞれにはしっかりと使い分けの用法があります。
まず、信用の用法について。
信用:その人の過去の実績や功績に基づいてその人のことを信じること
すなわち信用とは、人のこれまでの過去の実績だとか、輝かしい功績だとかその人の一昔前の実力を認めて信じることです。
「信じて、用いる」という言葉が指し示す通り、どちらかというと上司が部下を登用するような何となく主従関係が見え隠れする言葉ですね。
その一方で、信頼について。
信頼:これまでの関係性や、将来性に期待してその人を信じ頼ること
すなわち信頼とは、過去の実績なども大切ですが、失敗も含めたこれまでのチャレンジをすべてひっくるめてその人のこれからを信じて、頼ることです。
「信じて、頼る」という言葉通り、精神的にもたれかかるような、信用に比べて距離が近いような関係性を指し示す言葉です。
つまり、信用とはその人の過去を信じて登用すること、信頼とはその人の未来を信じて頼ることになります。
「信用」と「信頼」の使い分けが人生の命運を左右する
さて、定義を踏まえた上でここからが本題。
信用と信頼を意識して使い分けることで人生の成功確度は飛躍的に変わります。
ちなみにそれぞれに優劣はありません。どちらかが良くて、どちらかが悪いというのはないです。
ただし、自分が人生をかけた挑戦をするときは「信頼」できる人間で周りを固めなければなりません。
少し例を挙げてみましょう。
Hタイガースは日本のプロ野球球団。
今年は何が何でも優勝したいと思っている人気のチームです。
そこで、ホームランを打てる大型の4番バッターを獲得したいと思っていました。
すると、そこに海外にすごい選手がいるとの情報が入りました。昨年までの成績は何と3割越えでホームラン連発のすごい選手です。
その人を「信用」するのであれば実績十分。
日本のスカウトはその実績のみでその選手を獲得することにしました。
しかし、実はその選手は日本行きにはあんまり乗り気ではなく、「適当にプレーをして年俸を貰って帰ろう」と思っていました。
スカウト陣も、他の球団に取られまいとして急いで契約したため実際のテストや本人の意思確認などをせずに双方が十分な「信頼」がなく、日本でのプレーが決まりました。
その結果、ホームランはたった1本。2ヶ月で解雇になりました。
チームは優勝を逃しBクラス。不本意な結果に終わりました。
上記の例で言えば、互いにしっかり信頼しあえる関係を築き合えていれば、お互いにハッピーな関係になれたはずです。
ビジネスの例も挙げておきましょうか。
A社はイベント会社。
クラブを貸し切り、毎月200人を動員する人気イベントを行なっていました。
するとそこへ、友人から「紹介したい人がいる」と言われ、実際に会ってみるとロレックスの時計をした「イベント仕掛け人」と言われる人でした。
その人は自分が入れば500人は呼べるといい、過去の実績資料も用意しておりA社の社長はもっと儲けが欲しかったので、その人の実績を「信用」し1,000人イベントを開催することにしました。
しかし、当日はいつもと同じの200人。大赤字です。
おまけにそのイベント仕掛け人は売上の一部をネコババし、いつの間にか消えていました。
実はその人は有名な詐欺師で、ロレックスももちろん偽物で、イベント荒らしと呼ばれる人間だったのです。
社長もその人を信頼するために、何度か飲みに行く、あるいは200人イベントを何度か一緒に開催してその人との関係性を築くべきだったのです。
信頼できる人間を近くに置いて、情報を探ることもできたでしょう。
ここまで例を挙げてみればお分かりかと思いますが、人は「信用」するだけでは不十分で、「信頼」できないといけないわけです。
次の章で私個人としての信用と信頼の使い分けのイメージについて共有しましょう。
「信頼ゾーン」と「信用ゾーン」分けのススメ
私個人としては以下の図のようなイメージで信用と信頼を使い分けています。
自分に近ければ近いほど、信頼ゾーンになります。
この信頼ゾーンに入ってきた人としか大事な仕事はしないと決めています。
その一方で、信用ゾーンの人とも仕事はすることはするのですが、何かがあったとき用のリスクが怖いので契約書を何重にも巻いたり、あるいはマネジャーをつけたりとリスクヘッジをします。
信用ゾーンから信頼ゾーンに入るための基準は自分の中にはあるのですが、それは多方面に配慮してパブリックな場には書かないようにします。
何れにせよ、人を信頼するためには「過ごした時間」×「経済力」×「実績」のそれぞれのドライバーがうまく噛み合わないといけないので、ここら辺を重視したりします。
余談ですが、就活なんかはこの「信用」と「信頼」をフル活用して人を取ってると思います。学歴なんかがまさにそうですね。
学歴という信用があった上で、面接や面談を通じてその人のポテンシャルを、すなわち将来性を見て採用するわけですから「信頼」に当たるわけですね。
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信頼関係をぶち壊す3大要因
信頼が大事だ!とお伝えしてきましたが、信頼関係も永遠ではありません。
とある3大要因によっていとも簡単にぶち壊れます。
- 金
- 悪女、悪男
- ギャンブル(投資)
上の3つですね。あまりにも有名です。
説明するまでもないですが、上記の要因が絡むと99.99999%信頼関係の崩壊が待っています。
「金の切れ目が縁の切れ目」「愛想尽かしは金から起きる」「七人の子は生なすとも女に心許すな」「悪銭身につかず」「泥濘に足を踏み込む」etc.
ことわざというのは世の中の心理を表す、古人の知恵の結晶です。
そのことわざには、金、悪女/悪男、ギャンブルや投資にまつわるものがたくさんあるわけでそれだけ人間関係にとって脅威だということがわかります。
この3大要因にはしっかりと気を配りたいものです。
最後に
私が経営者として活動してきて得た知見なので、他にも色々な意見/見解はあるかと思います。
とはいえ、この信用と信頼の違いを意識し始めてから、経営状態もかなり良くなり、人生の運も非常に向いてきましたので、私としては真理なのではないかなと信ずるところです。
ちなみに一言添えておくと、信頼ゾーン構築のためには多少痛みも伴います。
経営は遊びではないので、ちょっとでも怪しい点がある人間や信頼不十分な人間がいる場合友人であっても遠ざける必要があります。
プライベートで遊ぶ分には良いですが、人生の重大な意思決定をするときにその人が足かせになると辛いのは自分です。
ぜひ、「信用」と「信頼」の違いを踏まえて良い人生を好転させていきましょう。