20代は絶対に読むべき名著『思考の整理学』感想と学び

普段は読書をしても書評系の記事は一切書かず、自分の中で咀嚼して終わりなことが多いのですが、外山滋比古先生の『思考の整理学』は非常に有益で学びの多い教材だったので、その感想と学びを是非シェアしたいと思います。

思考の整理学で学べる内容

思考の整理学とは一言で言うなれば、小手先のテクニックではなく、”考え方”の本質を学ぶことができる本です。

最近書店に並ぶ自己啓発本は「やれ起業しろ」だの、「心にゆとりを持て」だの、一見役立つように見えるアドバイスをしつつも、現実的には再現性に乏しい戯言が並んでいる印象を受けます。

人にはそれぞれの人生があって、各々に適した選択があるのだから著名人が押し付けがましくミスリーディング(サロンへの勧誘、メルマガ登録誘導etc)するような内容が並んでいるのはただの営業PRに過ぎないわけです。商売な訳ですから。

 

一方で、思考の整理学は邪な目的は一切なく、これからますます不確定な未来になっていく世の中で我々は「物事をどう思考をすべきか」「何を指針として意思決定すれば良いのか」ということを例を示しつつ一般化し、再現性のある学びを提供してくれます。

とは言え、こうしろ!ああしろ!という高圧的な論調ではなく、「こうしたら私の場合上手くいったよ」「歴史上こういうケースが多いからこうしたほうがいいんじゃないかな?」といった一緒に寄り添って考えてくれるような語り口なのでとても読みやすいというのもとても好感が持てます。

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2年連続東大・京大といった国内トップ大学でも評価を得ている書物なので、思考のフレームワークを学ぶ上ではうってつけの一冊です。

思考の整理学の感想と学び

ここからは、思考の整理学の感想と得られら学びについてシェアしていきたいと思います。

各見出しは書物内のタイトルそのままではなく、私なりの解釈を交えた上で記載していますので悪しからず。

見つめる鍋は煮えない、アイデアは寝かせよ

「見つめる鍋は煮えない」と言うことわざがあるのですが、言い得て妙なもので「まだかなまだかな」と待っているうちは特の流れは遅く感じられ、鍋はなかなか沸騰しない。

しかし、他の作業に集中しているといつの間にやらあっという間に鍋は沸騰している、と言うことを言い表しています。

考え事やアイデアを考える時もそうで、「いいアイデアを考えなきゃ」とウンウンと考えているうちは全くアイデアは閃かず、ぼーっとしている時や電車の中でふと閃くなんてケースが多いわけです。

何か思考をする際は、ずっと考え続けるのではなく今あるアイデア候補を寝かせることで、それが発酵し良いアイデアに昇華すると言う事が綴られています。

本書でも触れられていますが、かつての偉人たちの閃きはトイレや馬車の上、ベッドの上など比較的リラックスできる場所で起きていたというエピソードも添えられており、なるほどなと腹落ちしました。

マネジメントにはピグマリオン効果をフル活用すべき

ピグマリオン効果とは、期待を込めた態度で接し続けると、相手はその期待に応えるようになると言う現象のことです。

例えば、社内で営業グループがAB2つあったとして、Aでは営業成績を明確にし週毎に結果を掲示し、未達成の者やサボりや遅刻も厳密に処罰しました。

一方で、Bグループでは営業成績問わずとにかく、「今週も君たちのチームは良かった」「これからも期待しているよ!」ととにかく肯定的な言葉を投げ続けました。

すると、その2ヶ月後褒め続けたBグループはさらなる期待に応えようと進んで努力し、営業成績がAグループを上回る結果となりました。

これをピグマリオン効果と呼ぶそうです。人は失敗して叱られると、消極的になり一々誰かの判断を仰いだり確認を求めたりするようになります。

しかし、一方で褒められ続けると「自分はまだまだやれるんじゃないか」「この人の期待に応えたい」とポジティブな思考へと変わっていく見違えるようになると言うのです。

上記の例は極端な者ですが、規則でガチガチに縛ってしまい、可能性の芽をつむようなマネジメントではなく人を一人一人肯定し褒めることで圧倒的な成果につながる可能性があると言うのがここでの学びでした。

  • 「自分に厳しく、人には優しく」
  • 「否定から入らず、肯定から入ること」
  • 「人格否定ではないことをしっかり伝えること」

私もマネジメントにおいてピグマリオン効果を意識してみようと思います。

インブリーディングは避ける、同族同士で群れるものに成長はない

家族間、親族間での結婚・交配、すなわちインブリーディングは劣勢遺伝の誕生につながるとして、生物学上望ましい者ではないとされてきました。

思考の整理学では、このインブリーディングの思想は生物学上のみならず我々の社会グループ・コミュニティにおいても当てはまるとし、できる限り同族で固まらず専攻や思想の大きく異なるものと関わることを勧めています。

どう言うことかと言うと、WEBマーケティングの素養のあるもの同士がひたすら議論を交わしたところでそこに新しい化学反応は生まれません。

また、政治思想が固まったもの同士で延々と議論を重ねても、だんだんと思想が過激になってよくない方向に向かってしまうのは過去の歴史が証明するところとなっています。

ホリエモンさんもどこかで発言されておりましたが、「化学反応が起きない場にいってもつまらない、時間の無駄」と一蹴したコメントを残されていたと思いますが、まさにインブリーディングを嫌った思想なのだと思います。

 

自分の所属するコミュニティを飛び出し、全くの畑違いの環境に飛び込んでみること。そうすることで新たな知見が生まれ、化学反応は生じるのです。

似た者同士でぬくぬくやっているうちは井の中の蛙、大海に飛び出し様々な分野のトップエリートのコミュニティに飛び込んでみることは私も心がけたいと思います。

第一次的現実をベースに地に足をつけた指針を身につけよ

ここは個人的に一番刺さった章です。現代人の抱える精神ストレスやプレッシャーみたいなものはここに起因するのではないかと個人的には思っています。

私たちが生きる世界には2つの世界(現実)が存在し、自身の実体験によって得られる現実世界「第一次的現実」と、知的活動によって得られるもう一つの現実世界「第二次的現実」に分けられます。

第一次的現実とはリアルな私たちの日常生活を指し示す世界であり、会社に行くだとか、家で家事をするだとか地に足の着いた現実世界のことを指します。

その一方で、第二次現実的世界とは、読書や学校の勉強、テレビやSNSを通じて得られるあたかも現実世界のように思えるが、実は自分の実世界とはかけ離れた現実のことを指します。

思考の整理学ではこの2つの現実世界をしっかり区別した上で、第一次的現実、すなわち自分が今生きる世界で地に足のついた指針を確立せよと警鐘を鳴らしています。

 

どう言うことかというと、現代人は自分が住む第一次的現実を飛び越えて、自分の世界と実は違うが、実世界のように思い込む第二次的現実にいるように錯覚する時間が長すぎる、あるいは常にそうなっているということです。

ここはかなり哲学的な章なので、例を援用して説明します。

インスタグラムは今や万人が使うSNSですが、人々の幸せの絶頂を切り取る特性のあるプラットフォームです。そればっかり見ていると、友人の海外旅行や高級ブランド品の投稿が溢れてきて「私は不幸だ」「世界は不平等だ」などとフラストレーションがたまるケースが多いようです。

ですが、それは自分と全く関係のない第二次的現実、すなわち他者の幸せの絶頂の一部分のみを切り取った瞬間に過ぎず、自身の現実世界(第一次的現実)には無関係のはずです。

しかし、あまりにもSNSに依存するため、あたかもSNS上の世界を自身の世界と同一だと錯覚してしまうのです。

 

思考の整理学ではこうした悲劇を避けるために、第一次的現実に立脚し自分自身の指針を持つことが大切だと、そしてそうするための方法論を提案しています。

この章は是非読んでほしい。

 

現代の資本主義の本質は、理想の自分と既存の自分の差分を浮き彫りにし、それがお金で表示されることです。

理想の自分(シャネルのバッグ、月に1回の海外旅行、イケメン高収入彼氏)

既存の自分(無印のバッグ、年末年始の帰省のみ、彼氏なし)

この差分、すなわち欲望こそが資本主義の原動力です。

今一度自分の生活を見つめ直し、自分の生きる今にとって何がもっとも必要か、そして自分が渇きを感じるポイントはどこなのか、そしてそれはなぜなのかということを熟慮できる大変有益な章です。

思考の整理学の読み方

最初から最後まで一気にガーッと読むのがもっともオススメですが(各章ごとにある程度関連性があるため)、時間がない場合は目次を見開いて興味のある項目から読むことも可能です。

ちなみに一回通読しただけでは、この本の良さはあんまりわかってきません。

2、3回以上読んでいるうちに、「なるほど、こう言うことか」と自分の中に理解が落ちてくる感じの本なので、ふと空いた時間に何度も読み直してみるのがオススメの読み方です。

また、読んでいて「これは、実生活で使えるな」と思う箇所があったらすぐにメモを取りつつ読むとさらに効果が高いでしょう。

本書でも触れられていますが、人の忘却曲線は残酷なので必ず閃いたことは形にして残しておくのが吉です。

 

『思考の整理学』本当にオススメの名著なので、是非手にとってみてください。

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